コットン【こっとん】

木綿木棉(もめん)は、ワタ種子から取れる繊維コットン英語 cotton)。ワタ自体のことを木綿と呼ぶこともあるが、ここでは繊維としての木綿について述べる。

ワタとはアオイ科ワタ属の多年草の総称で、木綿は種子の周りに付いている。繊維としては伸びにくく丈夫であり、吸湿性があって肌触りもよい。このため、現代では下着などによく使われるが、縮みやすいという欠点もある。主成分はセルロース

単に綿(めん)とも言う。摘み取った状態までのものが棉、種子を取り除いた後の状態のものが綿だが、区別しないことも多い。

ただし、「綿」と書いて「わた」と読むのは、本来は塊状の繊維全般を指す語である。布団座布団の中身を繊維の種類を問わず「綿(わた)」と呼ぶが、これはその本来の用法である。古くは、中でも真綿の原料)を意味することが多かった。

材料[編集]

綿花は開花後、成熟したさくが開裂し、綿毛に覆われた種子(実綿,seed)が出てくる。綿毛には長く伸びた繊維と短い地毛 (fuzz) がある。繰綿機で実綿から分離された長繊維をリント (lint) または繰綿 (ginned cotton) と呼び、次いで地毛除去機を用いて分離した地毛主体の短繊維をリンター (linter) または繰屑綿と呼ぶ。 リントは紡績し綿糸・紐・綿織物製品や装飾品、または不織布あるいはそのままの形で医療・衛生用品、ぬいぐるみ等の充填物(中綿)として広く使用される。 リンターは繊維が短く紡績原料とはならないが、リンターパルプ、レーヨン、セルロース誘導体調製の原料として重要である。

栽培[編集]

コットン・ピッカーによる収穫風景

綿花の栽培には降霜のない長い季節と600mmから1200mm程度の降水量が必要とされる。この条件を満たすのは熱帯から亜熱帯にかけての湿潤・半乾燥地帯であるが、現在では灌漑の発達により、ウズベキスタンなどより降水量の少ない地域でも大規模な綿花栽培が行われるようになってきている。生産された綿花はコットン・ピッカーなどの収穫機械により収穫されるが、アフリカなどの開発途上国では手摘みによって収穫されている。

用途[編集]

木綿は様々な織物製品に使われている。吸水性の高いタオルローブなどのタオル地ジーンズデニム、青い作業服などに使われるカンブリックコーデュロイシアーサッカー、木綿綾織りなどがある。靴下下着Tシャツの多くは木綿製である。ベッド用シーツも木綿製が多い。木綿は、かぎ針編みメリヤス用の糸にも使われることがある。木綿にレーヨンポリエステルなどの合成繊維を加えて布を織ることもある。

織物以外にも、漁網、コーヒーのフィルター、テント火薬ニトロセルロース参照)、綿紙製本用材料などに使われている。中国で最初に作られたは木綿繊維を使っていた。消火用ホースも木綿で作られていたことがある。

木綿繊維を採取して残ったワタの種は綿実油の原料となり、食用に供される。種から油を絞って残ったものを綿実粕と呼び、反芻する家畜の飼料となる。綿実粕に残存しているゴシポール単胃の動物には毒性がある。木綿の種の殻(綿実殻)は乳牛に繊維質として与えることがある。アメリカの奴隷制時代には、ワタの根の皮を堕胎薬として利用する民間療法があった[16]

ワタの種から長い繊維を採取すると、コットンリンターと呼ばれる短く細い繊維が残る。一般に3mm未満の繊維であり、機織りの際に残った繊維くずもコットンリンターと呼ぶことがある。コットンリンターは紙やセルロースの製造に使われてきた。イギリスではこれを "cotton wool" とも呼ぶが、コットンリンターに加工を施し医療化粧などに使う脱脂綿の意味にも使う。

本しゅすのような布を織るために加工を施した木綿繊維を「シャイニーコットン」と呼ぶ。これは光沢が強いのが特徴だが、吸水性がなくタオルなどには向かない。

「エジプト綿」はエジプトで栽培した特に長毛の木綿で、高級ブランドによく使われている。さらに丈夫で柔らかい「ピーマ綿」はアメリカ合衆国南部で栽培されているが、南北戦争の際にヨーロッパでピーマ綿を入手できなくなり、その代替としてエジプト綿が使われるようになった経緯がある。

利点と欠点[編集]

利点[編集]

  • 肌触りが良い。
  • 吸水性が良い。
  • 熱に強くて丈夫。
  • アルカリに強い。
  • 水に濡れることで強度が増し洗濯に強くなる。
  • 染色性や発色性に優れている。
  • 吸湿性が良い。
  • 染色性が良い。
  • 通気性が良く涼しい。
  • 厚手にすれば温かい。
  • 価格が安価なものが多い。

欠点[編集]

  • 皺になりやすい。
  • 水に濡れると地の目方向に縮む(一旦縮むとそれ以上は縮まない)。
  • 乾きが遅い。
  • 長時間日光に当たると黄変する。
  • 強い酸に弱い。