古来高麗茶碗の最高峰とされるもので、「竹の節高台」と称される高い高台をもつ。いわゆる上手物(じょうてもの)とは程遠い、日常雑器の茶碗に過ぎないが、いかにも侘び茶にふさわしい素朴で力強い味わいがある。釉は枇杷色と称される。高台付近は強度の貫入でひどく爛れ縮れている。これをカイラギ(梅花皮)といい独特の見所とされている。文献上は『宗及茶湯日記』に天正6年(1578年)、藪内宗和の茶会で用いられたとあるのが初見である。「井戸」の名の由来は諸説あるが、単純に「井戸のように深い茶碗」の意とする説が有力である。落語「井戸の茶碗」にあらわれる。